図書館におけるカビ対策について
カビはどこにでも存在するため、
室内への侵入や図書への付着を完全に防ぐことはできません。
侵入したカビを増やさないことが重要なのです。
本のカビ発生例
古い図書館のイメージを形容する際に、しばしば「かび臭い」という表現が用いられます。古い図書館が一様にカビに汚染されているとはいえませんが、図書などの紙の資料にはカビが発生しやすく、そのような資料を大量に保管している図書館では、カビ汚染が大きな問題となることがあります。
図書にカビが発生しやすいのには理由があります
紙の原料となる植物繊維の主成分はセルロースという多糖類です。 多くのカビは、植物体のセルロースが大好物ですので、紙でできた図書は食べ物の塊といえます。 新しく出版された書籍や雑誌には、カビが生えにくい紙やインクが用いられていますが、そのよう な対策が取られていない古い図書は、より適切な管理を行わないと簡単にカビの食べ物となってしまいます。
栗のように見えるケタマカビの子嚢果
そこで、図書のカビ対策、どうすればいいのでしょうか?
カビの発育を抑制するポイントは湿度です。カビは、栄養があっても水分がないと発育できません。 また、図書そのものがカビの栄養になるわけですので、コントロールができませんが、 水分はコントロールができるわけです。適切に保管されている紙資料は、通常カビが発育できるだけの水分を含みません。 しかし、室内の空中湿度が高い状態が続いたり、雨漏り、漏水などの建物のトラブルで本が高湿状態またはぬれたりすると、 思わぬカビの大量発生を招くことがあります。
ある図書館での話しです
老朽化した建物から新築の建物に蔵書を移動したところ、図書にカビが発生し、さらにカビ臭の問題も起きました。
調査依頼を受け、図書館内の空中浮遊カビ数を調べると、幸いそれほど高濃度ではありませんでしたが、汚染の拡大を防ぐために発生カビの除去、強制換気などの措置を取りました。
カビ発生前の背景を確認したところ、このケースでは、図書を移動した日の天候は小雨でしたが、雨除け対策をしなかったため、
図書が湿った状態となったことと新築の建物は建材の水分量が古い建物より高いため、室内の湿度が高くなりやすいのがカビ発生の要因と考えられました。
図書に発生するカビとしては、クロカビ、アオカビ、コウジカビ、ススカビなどがよく知られています。
これらのカビは、人の生活環境にごく一般的に見られ、空気中にも多く浮遊しています。
また、土壌に多いケタマカビ(学名:ケトミウム)は、セルロースの分解力が強く、紙を激しく劣化させます。
ケタマカビは、とくに水害を受けた図書や壁紙、紙製品、衣類などに発生しますが、消毒薬、紫外線、乾燥などに抵抗するため、一度発生すると被害が大きくなる恐れがあります。
図書館における
カビ対策の基本
- 日頃からカビが発生しにくい環境作りを心がける、
- こまめなチェックでカビの発生をすばやく察知する、
- カビが発生したら早期に対策をとり、被害を拡大させないこと
適切かつ迅速な対応で、貴重な資料を
カビから守りましょう。